聴覚障がい者対応字幕に求められること

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普通に聞こえている皆さん(ここでは健常者とします)は、ふだん、“音から得られる情報にどれぐらい頼って生活しているか?”なんて、考えたこともないと思うのですがいかがでしょう?
かく言う筆者も、聴覚障害者用字幕の制作をあちこち指導するようになってから、聞こえないことがどういうことかを幾度も説いてきましたが、実際には、いまだにそれがどれだけ大変なことかをうまく説明しきれずにいます。

聴こえないということの本質

一時的に耳を塞いでみたところで、聞こえないことのシュミレーションにはなりません。長時間その状態で生活してみる必要があるのです。

まあ数日なら、言葉のやりとりは筆談だったりパソコンを使ったりでかなりカバーできるでしょう。 問題になるのは“周辺状況に対する判断”が継続的にできなくなることなんです。

後ろから車が来ていてもわかりません。
友達に呼ばれていてもわかりません。
道に迷ったときに、車の音を頼りに通りに出ることもできません。
雨音に気づいて洗濯物を取り入れるのも難しいですね。
一つの感覚の消失によって、無意識に得られていた基本情報が手に入らなくなるのが“聞こえなくなる”ということの本質なのです。

では、そのまま映像作品を見てみるとどうでしょうか?

たとえばドラマは、出来事の流れをすべて時系列かつ丁寧に並べてはいません。シーンがポンと変わると時間や場所が何気にすっ飛んだりします。カットがポンと変わってまったく違う場所のように見えても、実は壁1枚隔てただけだったりなんてこともあります。

その違いを、はたして映像情報だけで判断できるものでしょうか?

音を視覚情報に変えるために

ぜひ音を消して日本映画を1本見てみてください。健常者である私たちは、音の状態がどう変わっているかを無意識に聞き分け、映像の変化と結びつけることで展開を理解していることが多々あることに気づくでしょう。

聞こえない人のために字幕をつくるということは、この“わからなくなってしまう情報”を文字で提供するということなんです。単にセリフや言葉の内容だけを文字にするものではありません。

  • 言語としての日本語を文字にする
  • 誰がどのように、どういう話し方で会話しているか
  • 言語以外のさまざまな音を情報として可視化
  • 音楽という言語も可視化

これらが音を文字情報とするために必要なファクターです。

でも全部を文字にしたらいったいどうなるでしょう? 言葉自体だけならどうすればよいかの想像もつくでしょうが、その他のものを文字に置き換える際には何が求められるのでしょう?

そういった問題を解決するために何を行い,何を伝え、何を省くのか。そこにプロとしてのノウハウがあるのです

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